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【Ingress】ユーザーに恵まれすぎたゲーム"Ingress"の問題点と総括

この記事は、私が先月書いた記事の続編であり、Niantic社の位置情報ゲームIngressの問題点を指摘した上で、総括を書く。Ingress自体をよく知らないという人は、Ingressの紹介も兼ねている以下の記事をまず読んでほしい。

 

Ingressの問題点

私が重大だと感じている問題点から順に挙げる。

 

プレイヤー間のトラブルを誘発する仕様が多い

おそらくIngressの問題点と聞いて最も想起されるのがこれではないだろうか?実際、多くの記事で取り上げられている問題点である。*1

Ingressは位置情報ゲームであるので、通常のテレビゲームやネットゲームよりもプライバシーが危険に晒されることは性質上仕方ない。しかし、Ingressにはプライバシーを守る気が全くない仕様や、トラブルを未然に防ぐ気が全くない仕様が多く、ユーザーが増えるにしたがってこの問題点は無視できなくなっていくと思われる。

例えば、このAlerts画面を見てほしい。

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画像に所々黒塗りで消されている場所があるのが分かるだろうか?この場所には、自分のポータルを攻撃した敵プレイヤーの名前が表示されており、攻撃の時刻もセットで表示されている。Ingressの仕様上、プレイヤーが攻撃できるポータルはそのプレイヤーの近場にあるポータルしかないため、自分のポータルを攻撃した敵プレイヤーが、その時刻に自分のポータルの付近に居たことが分かってしまう。当然、付近のポータルが攻撃された通知を見た直後にその場所に急行すれば、攻撃している敵プレイヤーを直接見ることができる

その上、Alerts画面にある敵プレイヤーの名前をタップすると、そのプレイヤーにメッセージを送る画面に即座に移行する(よく誤タップするレベル)。これは明らかに暴言メッセを誘発する仕様であり、しかも暴言メッセ以外の用途がほとんど存在しない謎仕様である。

自分がせっかく時間とアイテムを使って確保したポータルが敵に破壊された場合、嫌な気分になるのが普通だ。この記事でIngress絡みの暴力事件が取り上げられているが、このような事件が日本で量産されていないのは単に日本のIngressプレイヤーのマナーが良いからであり、この仕様自体はトラブルを誘発する危険なものである。

 

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この記事からお借りした画像。この程度のメッセージで済むのはある意味マナーが良いと言うべきかもしれないが、自分の容姿や住所がバレやすいゲームということを考えるとなかなか不気味である

 

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△ポータルに置いてあるアイテムを誰が設置したのか、ネット上からも分かる仕様となっている(画像では黒塗りでプレイヤー名を消している)。アイテムの設置はポータルの40m以内に接近しないとできないので、プレイヤーがそのポータルを訪れたことが分かる。しかしこちらは時刻までは分からないので問題点と言うほどでもないかもしれない

 

プレイヤーがすること、できることが途中からほぼ変わらない

前述の記事で私がIngressの評価点の1つとして「新規のプレイヤーが不利になりにくい」を挙げたが、これは裏を返せば新規のプレイヤーと古参のプレイヤーに差がつかないということでもある。Ingressでは、プレイヤーがレベル8に到達するまでは徐々に使えるアイテムが増えていくが、それ以降は使えるアイテムが増えることはない。長く続けたからといって新たな発見があったり理解度が深まったりするわけでもなく、ただただポータルを訪れることでしか差がつかない。早い話が、上達を楽しめるゲームではない

この点に関しては、Ingress特有のものではなく、ポケモンGOなどの他の位置情報ゲームでも共通のものかもしれない。Ingressガチ勢は高難易度の実績解除に精を出したり、遠方のポータルを訪れたり、仲間と協力して広大な陣地を作ったり、オフイベントに参加したりしてIngressを長期間に渡って楽しんでいるが、このような行動をしないプレイヤーは急速に飽きてしまうのがIngressの欠点の1つだ。

 

攻撃側のプレイヤーが有利すぎる

Ingressでは、攻撃側が有利なバランスとなっている。これは、Ingressをダイナミックなゲームにするために必要な仕様である。もし防衛側の方が有利なゲームであれば、何日経っても盤面は動かず、新たにアイテムの設置もできず、新規のプレイヤーは陣地の構築も破壊もできないというクソゲーになってしまう。

しかし、攻撃側があまりにも有利過ぎる。複数のプレイヤーが数日かけて作り上げ、防衛アイテムで固めた広大な陣地も、たった一人の攻撃プレイヤーによって、たった数十分程度の時間で破壊できてしまう。まるで部屋一面に丁寧に並べたドミノを一気に倒してしまうかのように*2

Ingressは防衛と攻撃、2種類の楽しみ方が用意されているゲームにも関わらず、防衛側だけ賽の河原のような苦行を強いられるバランスとなっている。私も早々に破壊メインに移行してしまったが、防衛側と攻撃側をもう少し対等な関係にしなければ、楽しみ方が大きく制限されたゲームになりかねないと感じている*3。どんなポータルも普通のプレイヤー一人で十分破壊できてしまう現在のバランスは見直すべきだ。 *4

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△私が早稲田祭の動画配信の片手間で破壊した陣地跡。私の周囲の緑陣地は僅か1分足らずで破壊された

 

歩きスマホや運転中のスマホ操作を促しかねない仕様がある

Ingressでは、際どい位置調整を要求される場面が多い。たとえばポータルにレゾネーターというアイテムを設置するとき、ポータルから40mぴったりの距離で設置する方が有利になるという仕様がある。また、強力な防衛アイテムで防御されているポータルを攻撃する場合、ポータルにぴったり重なる位置まで移動してから攻撃した方が有利になる。このような際どい位置調整を要求すると、当然スマホを見ながらの移動を促してしまう。歩きながらかもしれないし、自転車に乗りながら、さらには車に乗りながらかもしれない。

そして、Ingressは高速移動によるペナルティが非常に緩いこのページに詳しく書かれているが、時速40km程度の移動であればペナルティなく行動ができてしまう。つまり自転車や車を運転しながらIngressをすることは十分可能であるし、短時間で多くのポータルを訪れる必要がある場面では、それが非常に効率的な行動になってしまうのだ。*5

日本でポケモンGOプレイヤーがゲーム中に死亡事故を起こしたことは記憶に新しいが、Ingressプレイ中の死亡事故は海外で2件発生している(これこれ)。

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△アイルランドにあるPoolbeg Lighthouse。IngressプレイヤーであるMaxwell氏は、Ingressプレイ中この場所で事故死した。Maxwellだからといって勝ち星のために死んでいいわけではない

 

利敵行為が発生し得る

Ingressでは、自分の行動が味方によって制限されることが少なくない。自分が大きな陣地を作ろうとしているときに、味方が邪魔なリンクを張ってしまうような仕方のない事例もあるが、味方が拠点となるポータルに不要なアイテムを入れてしまったり(そもそもほとんど不要なアイテムが存在するのがおかしいのだが)、レゾネーターを固めて設置してしまったりすることもある。

問題は、味方が設置したアイテムを取り除くことが原則できないために、味方のミスを修正することができないことだ(激レアアイテムを使うことでポータルを敵ポータルに転換して破壊する方法も一応ある)。明らかに上位互換のアイテムや手段があれば、せめてそちらに修正することは認めるべきである。

 

目標達成による報酬が少ない

Ingressでは、5時間毎に設けられたチェックポイントにて両陣営の陣地の得点が集計され、比較される。そして175時間毎に、それまでの35回の記録の平均で両陣営が勝負するゲームである。

しかし、自分の陣営が勝っても、自分が陣営に大きく貢献しても、特に報酬は無い。勝利したプレイヤーや貢献度の高いプレイヤーには報酬を与えた方が、プレイヤー達に自然に勝負のモチベーションを与えることができる。

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△画面下の四角い点が5時間毎の両陣営の得点を示し、画面中央のバーがそれらの平均を示している。青陣営が緑陣営に大差をつけて勝利している

 

調べないと分からないような裏技が多く、そのメリットも大きい

Ingressは解説ページが充実しているのは私の過去の記事で解説した通りだが、それでも解説不十分な部分が結構ある。しかも、その多くがかなり重要な事項である。

たとえばグリフハック。これはポータルから得られるアイテムを制限したり、その量を数倍に増やしたり、さらに経験値も獲得するというほぼ必須の行動なのだが、初心者向けページ(たとえばこのページや、このページ公式クイックガイド)で紹介されていない。

またIngressは性質上、勢力図を大変有効に使えるゲームなのだが、公式が提供している勢力マップであるIngress Intel mapが非常に重くどうしようもないクソツールである一方で、非公式のIngress Intel Total Conversionマップは比較的動作が軽く、拡張プラグインも多く出ている。このようなツールの存在も、ちゃんと調べないと分からないことなのだ。

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△Ingress Intel map(上)と、Ingress Intel Total Conversion(下)。下画面ほどの入り組んだ地域をIngress Intel mapで表示しようとすると最悪フリーズする

 

不正の余地があり、しかもそのメリットが大きい

Ingressは不正の恩恵が大きいゲームである。GPS Spooferによる位置情報偽装や、複数アカウントによるプレイが挙げられる。公式も対策に乗り出しており、私も明らかな不正の痕跡は見たことがないのだが、ポータルを訪れたかどうかで差がつくゲームである以上、不正の余地もメリットも大きいゲームであり続けるだろう。

 

総括

Ingressは最も完成度の高い、グローバルな位置情報ゲームである。様々な場所を訪れるモチベーションを自然に与えることに成功しているし、過疎地域のプレイヤーに大きな役割を与えているという、他のゲームにはまず見られない長所を持っている。

しかしながら、数々の爆弾仕様を抱えている点は見逃せない。プレイヤーのプライバシーを軽視し、トラブルの種を多く抱え、移動中のスマホ操作を誘発している。これらの問題点が日本で大きく騒がれていないのは、単にIngressがユーザーに恵まれているからにすぎない。ゲームバランスも決して良いとは言えず、始めて一ヶ月も経たない内に内容に変化のないゲームになってしまう点も厳しい。

Ingressが今後ユーザーを大きく増やせるかどうかは、これらの問題点をいかに改善していくかに懸かっている。

 

*1:一例を挙げると、

Ingress覆面座談会(前編):ストーカーに警察沙汰も? ホントにあったIngressの怖い話 (1/5) - ITmedia Mobile残念…イングレス絡みで暴力事件が発生しました。 | charingress.tokyo

*2:そして破壊側のプレイヤーには、陣地構築によって防衛側が手にしたのと大差ないレベルの莫大な経験値が、陣地構築にかかった時間よりも遥かに短時間で手に入る。陣地の破壊は一人で十分だが、復旧や構築は一人ではできない(一人で置けるアイテムの個数やレベルはルールで大きく制限されているからだ)。その上、陣地の構築にはポータルを訪れなければ原則入手できない「ポータルキー」が必須であるが、破壊側にはそのようなアイテムは必要ない。Ingressのあらゆる仕様が破壊側のプレイヤーを有利にしており、しかもこれはバランス調整のアプデを何度か重ねた後の結果である。ただし、唯一防衛側が有利になれる状況があり、それは国際間レベルの超巨大フィールドの作成に成功した場合である。このとき、フィールドが破壊されてもしばらくの間フィールドが残り続けるという仕様があり(おそらくサーバーの都合)、防衛側の大量得点が保証される。しかしこのような陣地構築は誰もができるわけではない

*3:私が考えている調整案は、各種防衛アイテムを強化&各種攻撃アイテムを弱体化する、強力な防衛アイテムを追加する、ポータルキーを有するポータルには遠隔操作でMODを追加できるようにする、ポータルのMODスロットを8つに増やす、陣地構築による経験値を増やす、陣地の広さに応じたボーナスアイテムを与える、破壊による経験値を減らす、敵ポータルから入手できるアイテムをもっと制限する、などだ

*4:さらにいえば、防衛側の最善策は守りたいポータルの40m以内に接近し、敵の攻撃で破壊された防衛アイテムを補充することであるが、この行動は敵同士のプレイヤーがリアルでエンカウントする確率を高め、無用なトラブルの原因となるという問題もある。そこまでして特定のポータルを守ろうとするプレイヤーが居るのかと疑問に思うかもしれないが、Ingressの高難易度実績の一つにGuardianというものがあり、これは特定のポータルを維持した日数によって解除される実績である。最上ランクのオニキスメダルを獲得するには150日もの間ポータルを守りきる必要があり、相当な労力を捧げるプレイヤーも少なからず存在する

*5:Ingressには、複数のポータルを特定の順番で訪れる「ミッション」というモードがある。高速でミッションを遂行したい場合、自転車や車に乗りながらのIngressは残念ながら有効である