2019年 ボードゲーム 「面白かった順」ランキング
3年ぶりのボードゲームランキング。対象は2019年内に自分が遊んだボードゲーム(2019年に発売されたボードゲームに限らないので注意)。ちなみに遊んだ場所はゲンシュン宅やYON宅、東京大阪名古屋のボドゲカフェなど。
記事内で使用する用語の解説をする。一般的な意味かどうかはともかく、この記事では以下のような使い方をする。
- インタラクション
プレイヤー間の相互の影響のこと。インタラクション性が強いゲームは他のプレイヤーの行動に応じて自分の行動を変えなければならない。逆に、インタラクション性の低いゲームはソロプレイ感が強く、他のプレイヤーの行動によって自分の行動が変わることがない - リプレイ性
「何度も遊べるゲームかどうか」の度合い。ゲームごとに異なる展開になるかどうか、の度合いにほぼ等しい。リプレイ性の高いゲームは、たとえば取れる戦術が多かったり、ゲームの一部にランダム性があったりする - キングメーカー
他の特定のプレイヤーを攻撃したり援助したりすることによって、最終的に勝利するプレイヤーを操作する、敗色濃厚のプレイヤーのこと。キングメーカー問題は3つ以上の勢力が存在するゲームでは少なからず存在するが、妨害や援助が容易なゲームほど深刻となる - ダウンタイム
待ち時間のこと。ダウンタイムが短いゲームはテンポが良い
自分が気に入りやすいボードゲームの特徴は以下の通り。以下の要素を満たしているようなボードゲームほど高評価になりやすい(例外もある)。
- テーマとゲーム内容・ルールの親和性が高い
- ゲーム内容が独特
- ルールがシンプルか、合理的で理解しやすい
- インタラクションが強く、ソロプレイになりにくい
- 運による影響が大きくない
- 取れる戦略の種類が多い
- リプレイ性が高い
- キングメーカー問題が深刻でない
- ダウンタイムが長くない
10位 ~ 1位を紹介した後に選外作品の紹介をする。ただし、同種のシリーズは1つの順位にまとめる。
第10位 ガンツシェーンクレバーシリーズ
同シリーズの「ガンツシェーンクレバー」と、その続編「ドッペルソークレバー」の2ゲーム。
評価点
- ビンゴゲームのような軽い雰囲気がある
- ルールが単純で分かりやすい
- ダイスゲームの割に運要素が少ない
- 基本的にソロのパズルゲームだがインタラクション要素もある
- ダウンタイムを減らす工夫をしている
- 終盤にコンボが繋がって点数が爆発するのが楽しい
- 運搬が楽
問題点
- テーマ性が皆無
- 定石が存在するので経験者有利
- 他種のゲームと比べると運要素とダウンタイムが大きめ
- ゲームに使用するシートが消耗品
総評 ダイスを使用した、勝利点爆発ビンゴ連鎖ゲーム
連鎖が楽しいダイスビンゴゲーム。プレイヤーはゲーム開始時にビンゴカードを受け取り、手番のプレイヤーは色がそれぞれ異なる6個のダイスを振る。手番プレイヤーはそのうち3個のダイスを選び、ダイスの色と目に応じた自分のビンゴカードの箇所を塗り潰す。続いて非手番プレイヤーは手番プレイヤーが選ばなかった3個のダイスのうち好きなダイスを1つ選び、ダイスの色と目に応じた自分のビンゴカードの箇所を同様に塗り潰す。塗り潰した箇所に応じて各プレイヤーは勝利点を獲得する。
このビンゴゲームには拡大再生産の要素があり、ゲームが進行するにつれ獲得する勝利点が指数関数的に増えていく。このゲームではビンゴカードの特定のラインを塗り潰すと、任意の箇所を即時塗り潰すボーナスを獲得できる。このボーナスを使用して塗り潰しボーナスを得られるような別の場所を塗り潰した場合、すぐに別の場所を追加で塗り潰すことができる。こうして終盤は次々と塗り潰しボーナスが連鎖し、勝利点が爆発的に増えていく。
ダイスゲームは運ゲーになりがちだが、ガンツシェーンクレバーはダイスゲームの割には運要素が小さい。6つのダイスの目から3つを手番プレイヤーが選んでビンゴカードを埋めるほか、ダイス振り直しボーナス、ダイス目再利用ボーナスがあるという特徴が利いている。また、自分が選ばなかった3つのダイスは非手番プレイヤーが使うことができるので、他プレイヤーに良いダイス目を渡さないように工夫するなど、インタラクション要素もある。
難点は、緩和されているとはいえ運要素やダウンタイムは別種のゲームより大きい所。また、高得点を取得しやすい定石があるので経験者が有利である所も、気軽な見た目と反していてやや厳しい。
ちなみに、ソロプレイ限定だがアプリ版も発売されている(ガンツシェーンクレバー、ドッペルソークレバー両方)。アプリ版ではビンゴカードのルールが少し変わったアレンジ版も提供されており、ソロプレイのスコアアタックも地味に面白いので、興味があったらプレイしてみてほしい。
△Androidアプリ版ガンツシェーンクレバー
第9位 アズール シントラのステンドグラス
評価点
- ステンドグラスを作るというテーマとルールの親和性が高い
- 盤面やルールの拡張性が大きく、リプレイ性が高い
- 他プレイヤーとの駆け引きが多く、インタラクションが強い
- 3人プレイのバランスが良い
- 接戦になりやすい
- デザインが綺麗
問題点
- 運要素がやや大きい
- ガラス片を毎ラウンド並べるのが面倒
- ガラス片が枯渇する展開になりやすい
- 大量マイナス点の押し付け合いになることがあり、苦手な人は苦手
- 本気でプレイするなら大量のカウンティングが必要
総評 ガラス片の奪い合い押し付け合いを制しつつ、自分のステンドグラスを効率良く制作するゲーム
2018年にドイツ年間ゲーム大賞を獲得したボードゲーム「アズール」の続編。場に用意されたガラス片をプレイヤーが順番に獲得し、そのガラス片を使って個人ボード上のステンドグラスを完成させていく。より多くのガラス片をステンドグラスに組み込むことで勝利点を増やすことができるが、ガラス片を無駄にすると勝利点を減点される。
シントラのステンドグラスは、前作アズールの良い点はそのままに、相手の行動や次の状況の先読みが強く求められるデザインにアレンジされている。たとえばガラス片取得の駆け引きは前作と同様で、相手が欲しそうなガラス片を先に取ってしまったり、相手にとって不要なガラス片を押し付けて相手に失点させたりすることができる。一方、前作と比較するとゲーム開始時にプレイヤーごとにランダムに生成する個人ボードや、ステンドグラスのA面B面、取得したガラス片の配置先を制限する「職人コマ」、特定のラウンドで特定の色のガラス片をステンドグラスに設置すると勝利点が追加されるラウンドボーナスなどが追加され、リプレイ性も上がっている。
問題点は、場のガラス片による運要素が大きいこと。自分が初手番のときに、たまたま自分に都合の良いガラス片の組み合わせが場にあれば、それだけで多少有利になってしまう。ガラス片を毎ラウンドいちいち場に並べるのもかなり面倒で、せっかくのフォトジェニックなゲームなのにアプリ版が欲しくなってしまう点もやや気になる。
第8位 センチュリー イースタンワンダーズ
評価点
- スパイス交換コンボの構築が楽しい
- 勝利点を稼ぐ主な方法が2種類ある
- 盤面を毎回変えられるのでリプレイ性が高い
- 選択肢が多い割にルールがシンプル
- 3人プレイのバランスが良い
問題点
- 地道なゲームなので人によっては受け付けない
- インタラクション要素がやや少なめ
- プレイ内容が序盤中盤終盤であまり変化しない
総評 効率の良い物々交換のルートをひたすら探索する地道なゲーム
3部作ボードゲーム「センチュリー」シリーズの2作目。プレイヤーはスパイスを物々交換する行商人となり、マップ内の島々を巡りながらスパイスの交易所を建設し、そこで手持ちのスパイスを別のスパイスに交換していく。交換を重ねるごとに少しずつ手持ちのスパイスの価値や個数が増していき、特定の組み合わせのスパイスを揃えて出荷すると勝利点が得られる。また、交易所を一定数建設すると自分の船がアップグレードし、勝利点が得られたり移動能力が強化されたりする。
センチュリーイースタンワンダーズでは、「リターンの高い行動を総当り的に探索する」という、多くのボードゲームにおいて重要な能力をシンプルに問われる。たとえばスパイスA, B, Cを2個ずつ持っており、最終的にスパイスA3個とC3個を揃えなければならないとする。このとき、自分が「A3個をC2個に交換する」「B2個をC2個に交換する」「B3個をA5個に交換する」「A1個C1個をB2個に交換する」のうち1つを選んで何度か行動できるとき、A3個とC3個を揃えるにはAABBCC→ABBBBC→AAAAAABC→AAABCCCとすればよい。ゲーム中に行う交換はもう少し複雑であり、自分の船の移動や交易所の建設の制約があるが、概ねこのような思考を繰り返して目的のスパイスを効率よく揃えていく。莫大な組合せの中から効率の良い手筋を見つけるという楽しみを何度も味わえるゲームだ。
比較的シンプルな手筋探索のゲームであるが、盤面がゲームごとに変わるのでリプレイ性は高い。また、交易所の建設により得られるアップグレードにも様々な種類があり、どのアップグレードを選ぶかでゲーム展開の幅が広がる。露骨に強いアップグレードや弱いアップグレードはなく、状況やプレイヤーによって優先順位は異なる。
問題はゲーム内容が地味なので人を選ぶ点。運要素は少なく、ひたすら手筋探索の能力を問われる。私自身、初プレイ時は良い交換サイクルを見つけられず、酷い負け方をして「これはCPUにやらせる系統のゲームではないか?」と思ったくらいだ。また、インタラクション要素は無くはないのだが比較的弱く、ソロプレイ色が強い所も人を選ぶ。
第7位 HANABI
評価点
- 手軽に協力ゲームの楽しさを味わえる
- 協力ゲームだが戦犯が生まれにくい
- 他のゲームではあまりできないようなコミュニケーションが生まれる
- 超小型で運搬が楽
問題点
- 運以外に差がつく要素があまり無い
総評 自分の手札が見えない状態で互いの手札のヒントを出し合い、プレイヤー全員で七並べをする協力ゲーム
ドイツ年間ゲーム大賞2013で大賞を受賞した作品。ジャンルは協力ゲームであり、プレイヤー同士で争うのではなく、全員で協力してゲームの目的を達成していく。このゲームの目的は、各色のカードを1から5まで順番に場に出すこと。ほとんどのカードは複数枚含まれているため、既に場に出ているカードを出してしまったり、順番を飛ばしたカードを出してしまったりするとペナルティを受ける。
HANABIの最大の特徴は、自分の手札が自分にだけ見えず、他のプレイヤーには見える点。手番では「カードを場に出す」「カードを捨てる」「他のプレイヤーにそのプレイヤーの手札のヒントを与える」の3種類の行動を取ることができる。他のプレイヤーに教えてもらった自分の手札のヒントをもとに、手札のうちどのカードを出すか、どのカードを捨てるかを選択していく。
手札のヒントを与えられる回数は限られている上、与えられる情報もかなり限られているので、「真意を推し量る」コミュニケーションが頻繁に生まれる。たとえば、白の1が場に出ている状態で「手札の右端のカードは白だ」という自分の手札の情報を他のプレイヤーから教えてもらったとき、「右端の白のカードの数字は不明だが、わざわざこのタイミングで教えてくるということは、このカードは場に出せる白の2なのだろう」というような類推をしていく。
問題点は運以外に差がつく要素があまり無いこと。プレイ時間がかかる割に内容が軽めのゲームと言える。慣れたプレイヤー同士でプレイすれば人読みによりスムーズにプレイできるようになるかもしれないが、それでも運の影響は大きめ。
第6位 ウボンゴ3D
評価点
- ルールが非常にシンプル
- パズルが難しく、解けたときの達成感が大きい
- 問題数が非常に多い(初級144問、上級360問)
- 非公式の拡張パズルがある
- ピースの感触が良い
- ソロプレイでも楽しい
問題点
- 立体パズルが苦手な人には難しすぎて地獄
- 立体パズルが得意な人でもドツボにハマると地獄
- 規定の時間内で問題を解ける人が少なく、大抵の場合本来のルールで遊べない
- インタラクション皆無
- 箱が非常に大きく運搬が大変
- 値段が高い
総評 ボードゲームとして成り立っているか怪しい、大ボリュームの高難度立体パズル
有名なパズルボードゲーム「ウボンゴ」の3D版。ウボンゴは万人向けの簡単パズルだが、こちらウボンゴ3Dは非常に難しく、決して万人向けではない難易度となっている。パズルの内容は、問題シートの指定マスの真上に、3ピース(初級)か4ピース(上級)の立体ピースを組合せて、ちょうど高さ2段の立体を作るというもの。たった3, 4ピースのパズルとなると簡単に思えるかもしれないが、立体パズルであるためピースの組み合わせ方がかなり多く、慣れた後でも規定の時間内(約2分)に安定して解くことは難しい。
実際に遊ぶと案の定規定の時間内に誰も問題が解けなかったり、泥沼状態の人が10分以上悩んだりすることがよくあるため、ボードゲームとしての本来のルールは忘れ去られ、各プレイヤーが別々にパズルに熱中して個別に疲弊していく孤独なゲームになることが多い。私はゲンシュン宅でのウボンゴ3D初プレイ時、挑戦していた上級問題がどうしても解けず、結局自分でウボンゴ3Dを買って解いてしまった。ちなみに本来のルールでは先に解いたプレイヤーから多くの勝利点を得られ、規定の時間内で解けたプレイヤー全員がランダムに追加の勝利点を得られるが、私はこのルールでウボンゴ3Dを遊べたことはない。
もはやボードゲームとして扱うことが憚られるゲームだが、それでもシンプルなルールと高い難易度のバランスが絶妙であり、パズルを解けたときの達成感も大きく、問題数のボリュームもあるため上位ランクインとなった。無駄にピースの種類を増やさないようにしているデザインもグッド。6つのピースを組み合わせて3×3のキューブを作る非公式の拡張パズルもあり、こちらも面白いので是非遊んでみてほしい。
第5位 ゴモジン
評価点
- ゲーム内容が独特
- 大喜利的な楽しさがある
- お手軽なプレイ感でボードゲームライト層でも楽しめる
- 運搬が楽
問題点
- お題の運要素がある
- 勝利点を与える相手を選ぶことができ、キングメーカー問題が発生する
- メンバーによってはテンポが悪くなる
- コンポーネントの必要性が薄い(自作でも再現できてしまう)
総評 五字クイズ
漢字2文字 + カタカナ3文字 の合計5文字でお題を他の人に伝えるゲーム。たとえばお題が「ライオン」なら「百獣キング」と表現したり、お題が「音楽」なら「桑田バッハ」と表現したりして伝える。漢字とカタカナの位置は変えることができず、お題に含まれる漢字や、お題中の連続したカタカナ2字は使用できない。お題が当てられると、お題を当てた人と5文字の表現を考えた人両方に勝利点が入る。辞書に存在するような2字の熟語や3字のカタカナ語を使っていた場合、その表現を考えた人に追加のボーナス点が入る。また、お題を見せる順番は5文字の表現を先に考えた人から自由に選ぶことができ、自信がなければあえて遅めの順番で自分の表現を見せてもよい。
ルールは単純だが、他のプレイヤーと競争しつつ5字の表現を探すのは思いの外難しい。自分が最後まで良い表現を思いつけなかったお題としては、「オカルト」「羽根」「朝礼」などがある。あまりこのような換言を行うゲームは見たことがなく、独特なゲーム性があると思う。
問題点は、「お題が分かっても分かっていないフリをする」ことで勝利点を与える相手を選べる点。この欠点は勝負の場ではかなり致命的となるため、あくまで言葉遊びをするゲームとして楽しもう。
第4位 プエルトリコ
評価点
- 「植民地」のテーマが分かりやすく初心者でも馴染みやすい
- ゲームシステムが独特
- 勝利に至るまでの道筋が多い
- 運要素が少ない
- インタラクション要素が非常に強い
- 接戦になりやすく勝敗を予測しにくい
- ダウンタイム(待ち時間)が少ない
- 3人、4人、5人プレイで違った楽しみがあり、どれも完成度が高い
- 拡張ルールの完成度が非常に高い
問題点
- ルールがやや複雑
- 定石を知っている方が有利
- 非合理的な行動を取ると他のプレイヤーにも被害が及ぶことがある
- 日本語版は入手が困難
- 準備が大変
総評 互いに互いの行動を模倣し合う植民地で、他人との差別化を図るゲーム
以下の2つの記事で取り上げた名作古典ボードゲーム。 プレイヤーは植民地プエルトリコの開拓者となり、入植者を働かせて作物を栽培したり建物を建築したりして島を発展させていく。個人的に「ザ・ボードゲーム」と呼んでいるほどの稀代の名作で、駆け引きやジレンマ、テーマに沿って行動する楽しさなど、ボードゲームらしい要素が随所に詰め込まれている。
プエルトリコの最大の特徴は、互いに互いの行動を模倣し合うというゲームシステムだ。すなわち、自分がある行動を取ると、その後に他のプレイヤーも同じ行動を取るか、強制的に取らされる。同様に、他のプレイヤーがある行動を取ると、自分もその後に同じ行動を取るか、強制的に取らされる。このような環境下で自分が抜きん出るように行動していく。
この特徴的なゲームシステムにより、プエルトリコは非常にインタラクションが強いゲームとなっている。たとえば、自分だけが作物を持っている状況で「売却」アクションをすると、他のプレイヤーは作物が無いので何もできず、自分だけが作物を売却して金銭を得られる。一方、もし自分の次のプレイヤーが「売却」アクションを取ると予想できるなら、今の自分のターンで「生産」アクションを取ることで作物を確保し、次の「売却」アクションに備えることができる。
プエルトリコの秀逸な点の一つに、テーマが分かりやすいという点がある。植民地支配を扱っており、植民地への入植者を示すコマは何故か黒い(おそらく黒人奴隷を意識している)。扱う作物はトウモロコシ、インディゴ、砂糖、タバコ、コーヒーとプランテーション作物ばかり。ルール自体はやや複雑であるが、テーマが一貫しているので案外初心者でもとっつきやすい。
問題点は、プエルトリコの魅力でもある強いインタラクション性。プエルトリコでは勝利点獲得に必要な行動を自分一人で行うことができないため、自分とWin-Winとなるような行動を他のプレイヤーに期待する場面が頻繁にある。よって初心者が合理的でない行動を取ってしまうと、その初心者だけでなく他のプレイヤーも被害を受けることがあり、これがよく不和の原因となる(オンラインボードゲームサイトのBSWでは外国人プレイヤー同士のチャット喧嘩がたまに発生する)。また、ルールが多い上に定石を知っている方が有利という点は初心者に厳しい。
第3位 ブロックスシリーズ
4人用の「ブロックス」、3人用の「ブロックス トライゴン」、2人用の「ブロックス デュオ」の3ゲーム。
評価点
- ルールが非常にシンプル
- プレイ時間が短い(4人プレイで15-25分程度)
- デザインが綺麗
- 囲碁と少し似た読み合いを必要とするので思考の余地が多い
- 価格が安い
- 妨害が必然的に起きるので妨害による罪悪感や不快感が少ない
問題点
- 先手が有利
- 「妨害」を体現したようなゲームなので苦手な人は苦手
- 3人以上でプレイする場合はキングメーカー問題が発生する
- テーマ性は皆無
総評 シンプルなルールと美しいデザインを備えた、サツバツ無慈悲でシビアな陣取りゲーム
どんなボードゲームカフェにも置いてある、超有名軽量級ファミリーボードゲーム。通常の4人版ブロックスの他に、3人用のブロックストライゴンや2人用のブロックスデュオがある。プレイヤーはゲーム開始時に21個のピースを受け取り、これを可能な限り盤面に置いていく。最初のピースは盤面の端に置き、2個目以降のピースは盤上の自分のピースと角だけで接するように(自分のピースの辺には接しないように)置く。プレイヤー全員がそれ以上ピースを置けなくなったとき、盤に置けなかったピースのマスの合計数が最も小さいプレイヤーが勝者となる。
ブロックスは超簡単なルール、短いプレイ時間、とっつきやすい見た目を備えているが、その実態は思考の余地が多くしっかり実力差が出る真面目なゲームである。しかも必然的に他のプレイヤーを潰しにかからなければならない、大変サツバツとした陣取りゲームでもある。
プレイヤーは盤上の自分のピースと角で接するようにしか次のピースを置けないため、相手のピースの角を埋めるように自分のピースを置くことで、相手が次のピースを置くのを妨害することができる。盤はすぐに過密状態になるため、近くの相手を妨害しなければ自分の付近のスペースをいずれ相手に取られることになる。ゲームが進むにつれ、ボードゲームを初めてプレイするような初心者でもすぐに妨害の重要性に気付き、熾烈な陣取り戦争に身を投じる。実は最初から全員が協調してピースを置けば、十分余裕をもって全員が全てのピースを置けるという事実が皮肉的である。まさにコモンズの悲劇だ。
問題点は、先にピースを置いた方が有利なので先手が有利であること。少人数のバージョンほど先手有利の傾向が強く、特に2人プレイのブロックスデュオでは必ず初心者が「一目を置く」必要がある。また、3人以上でプレイする場合、意図的に特定のプレイヤーを妨害することができなくはないので、キングメーカー問題が発生することがある。
第2位 クリプティッド (Cryptid)
評価点
- 論理ゲーなのに論理ゲー特有の堅苦しさがない
- 未確認生物の生息地を当てるというテーマが分かりやすい
- 論理パズルとして難易度が高く、勝ったとき(全プレイヤーの中で最初に解けたとき)の達成感が大きい
- リプレイ性が高い
- 難易度が2種類ある
- 勝敗を予測しにくい
問題点
- 誰か一人が一度でもミスをするとゲームが成り立たなくなる
- 論理ゲー特有の手番と探索の運要素がある
- コンポーネントの色が似ており見分けにくい。色覚異常者に厳しい
- 不正行為が(一応)可能
総評 分かりやすいテーマと明るいデザイン、シンプルなルールで堅苦しさを見事に排除した高難度論理ゲーム
2019年に日本語版が発売された論理ボードゲーム。プレイヤーは未確認生物Cryptidの研究者となり、ゲーム開始時にCryptidの生息地に関する別々のヒントを与えられる。ヒントは「Cryptidは砂漠か森林にいる」「Cryptidは熊の縄張りから2マス以内にいる」というような形式であり、ヒント単独では生息地を絞り込むのに不十分であるが、プレイヤー全員のヒントを全て満たすような地域はボード上のただ1箇所しかない。手番では「質問」と「探索」の2種類の行動を取ることができ、「質問」では他のプレイヤーが持つヒントに関する情報を一部聞き出すことができる。質問によって他のプレイヤーの持つヒントが推測できたら、「探索」によってCryptidの生息地予測を行う。正解すれば探索したプレイヤーが勝利する。
クリプティッドの最大の特徴は、ガチガチの論理ゲーでありながらテーマとデザイン、シンプルなルールにより堅苦しさを一切感じさせない所だ。論理ゲーを一切プレイしたことがないような人でも、ルールをすんなり理解でき、ゲーム開始後は自然とのめり込み、最後は勝っても負けてもポジティブな感想を残してくれる。やや難解な数学・論理の背景を持つゲームに対し、相応しいテーマとデザイン、ルールを与えて誰でも簡単に楽しめるようにすることは多くのゲームで行われているが、クリプティッドはそれを非常に高いレベルで実現している稀有なゲームだと思う。勿論、単にとっつきやすいだけでなく、論理ゲームとしても歯ごたえのある難易度であり、特に上級モードは論理ゲーに慣れていても難しい。考え出すとキリがないため、自分はプレイヤーが1手番に使える時間を2分に制限してプレイしている。
そしてクリプティッドは、「ルール説明をした時点でプレイヤーがゲームに感心する」という、珍しい現象がしばしば見られるゲームでもある。クリプティッドのマップは50種類以上あり、それぞれのマップに3人、4人、5人用のヒントの組合せが用意されている。そしてその全てのパターンにおいて、「プレイヤーに与えられたヒント単独ではCryptidの生息地は定まらず、プレイヤー全員のヒントを合わせて初めて生息地がただ1箇所に定まる」という困難な条件を満たしている。少数のコンポーネントの組合せでこれを実現しているのだから、相当に優秀なプログラマーが開発に関わっていたと思われる。
クリプティッドの最大の問題点は、誰か一人でもプレイ中にミスをするとゲームが成り立たなくなる点だ。たとえば、他のプレイヤーからの質問に対し誤った返答をしてしまったり、自分のヒントを間違って記憶してしまったりすると、Cryptidの生息地が定まらずゲームが終わらなくなったりする。私はクリプティッドを今年20回ほどプレイしているが、そのうち6回は他のプレイヤーのミスによってゲームが崩壊してしまったし、私自身がマップ作成を間違えてゲームを崩壊させてしまったこともある。本当はアプリ上で遊ぶべき類のゲームなのかもしれない。
第1位 モダンアート
評価点
- 絵画の競売というテーマが分かりやすい
- ルールとテーマの関連性が強く分かりやすい
- 他のプレイヤーの思考が見えやすく、初心者に優しい
- ゲームが進むにつれ展開が派手になり楽しい
- 競りの形式が豊富
- インタラクションが非常に強い
- リプレイ性が高い
- 勝敗を予測しにくい
- 「絵画の価値は、その画家の作品の出品数だけで決まる」というルールに皮肉が利いていて面白い
問題点
- 手札の運要素がある
- 3人プレイではプレイヤー1人の影響力が強く若干ゲーム性が変わる
- 本気でプレイすると大量のカウンティングが必要
総評 シンプルなルールによりシニカルなテーマを芸術的に表現した、傑作競りゲーム
27年前に原作が発売され、今日に至るまで様々なデザインで発売されている、古典の傑作ボードゲーム。自分も以下の記事で戦術を取り上げたほど気に入っている。
プレイヤーは画商となり、新進気鋭(?)の5人の現代アーティストの絵画を使って金儲けを試みる。手番のプレイヤーは絵画をオークションに出品し、プレイヤー全員が出品された絵画に対し競りを行う。絵画を競り落としたプレイヤーは、絵画を出品したプレイヤーに代金を支払って絵画を入手する。落札した絵画はラウンド終了時に換金することができ、絵画の換金価格は「ラウンド終了までに、その画家の絵画が何枚出品されたか」だけで決まる。多くの絵画を出品された画家の絵画は高値で換金することができるが、あまり絵画を出品されなかった画家の絵画は紙クズ扱いとなり換金できない。2ラウンド目以降は過去のラウンドでついた価格も考慮されて絵画の価格が高騰していくが、出品数下位の画家の絵画は過去のラウンドでどれだけ高値がついていようと紙クズになる。4ラウンド終了時に最もお金を稼いだプレイヤーが勝者となる。
モダンアートのユニークな点は、シンプルなルールによって現代アートに対する風刺的なテーマが見事に表現されている所だ。「モダンアート」のテーマはその名の通り現代アートであるが、不可解な作品が幅を利かす現代アート市場を揶揄したかのように、「作品の価値は流行りの作者の作品かどうかだけで決まる」というルールを通して現代アートを皮肉っている。さらに、ゲームのルールに従って行動しているだけで、プレイヤー達は「モダンアート」の世界の冷酷な画商として「適切な」行動を取るようになっていく。たとえば、ゲームに慣れるにつれ絵画カードの中央部分をデカデカと占める絵が全く目に入らなくなり、カードの隅を見て画家の名前だけを見るようになる。都合の良い「流行り」を生み出すために、自分で推し画家のトレンドを作るか、推し画家を切り捨てて他の画家のトレンドに鞍替えするか、敵対するトレンドを同担と協力して潰すかを考えるようになる。テーマに沿いながら守銭奴の画商としてゲームに没入していく楽しみを味わえるゲームと言える。
競りを扱ったゲームはあまり珍しくないが、モダンアートには「競りの形式が豊富」という競りゲーの中でも珍しい特徴があり、ゲームの展開の幅を広げ戦略性を高めている。たとえば、競りが盛り上がりそうなら全員が自由な順番で何度も入札できる「公開競り」、後半に入札するプレイヤーに買い取らせたいなら全員が順番に1回だけ公開入札する「一声」、1人だけ高値で買い取ってくれそうな人がいるなら全員が同時に入札価格を提示する「入札」や、価格を指定して売りつける「指値」が適当だ。モダンアートでは他のプレイヤーがいくらで入札したかすぐに分かるので、自分がズレた相場観を持っていても修正しやすく、初心者でも感覚をつかみやすい。
非常に完成度の高いゲームであるが難点が無いわけではなく、本気でプレイすると大量のカウンティングが必要になる点がやや厳しい(実際にはそこまで要求される内容になることはほぼ無いが)。また、3人でプレイするとプレイヤー1人が出品数に与えられる影響が大きくなり、手札によってはゴリ押しで何とかなってしまうことがある。4人か5人でプレイするのがオススメだ。
選外作品
ポンジスキーム
詐欺師となり、「ポンジスキーム(ポンジの手法)」という実在した詐欺手法を実践するゲーム。この詐欺手法は最終的に確実に詐欺師が破産する仕組みになっており、プレイヤーのうち誰かが破産した時点でゲーム終了となる。破産したプレイヤーは脱落となり、生き残ったプレイヤー間で勝利点を競う。ゲーム中にプレイヤー間で金と勝利点を「金額非公開で」取引することができ、資金繰りが苦しそうなプレイヤーやズレた相場観を持っているプレイヤーを狙って勝利点を低値で買い叩いたりできる。非常に独特なゲームデザインでお気に入りのゲームだが、非公開情報が多く、ボードゲームに慣れている人ほどゲーム終了後に微妙な反応を示すことが多いゲームでもある。
マジックメイズ
言葉やジェスチャーによるコミュニケーションを禁止された状態で、ボード上のコマを動かす協力脱出ゲーム。自分が担当する行動が頻繁に変わるので頭が混乱するが、全員で協力して見事に脱出できたときの達成感は大きい。非常に独特なプレイ感が気に入って購入したが、大人数で遊べる機会があまり無くまだプレイできていない。
ナゲッツ
柵と戦力タイルを使い、ボード上に置かれたナゲットを入手するゲーム。柵で区切られた範囲内で最も戦力が大きい人が範囲内のナゲットを独占できるが、戦力タイルはゲーム終了時まで裏返しに置くのでブラフをかけることができる。ポップな見た目やネタ成分の濃い設定とは裏腹に非常に真面目なゲーム。真面目なゲームは大体得意なのだが、なぜかナゲッツは自分が弱い系統のゲームである模様。悔しい。
オーディンの祝祭
バイキングとなって略奪や祝宴を楽しむ重量級ボードゲーム。平面パズルの要素が大きく個人的に好み。2人で遊んでも比較的バランスがよくて楽しいが、2人でもプレイ時間は2時間程度と長め。取れる行動が多すぎて1回遊んだだけでは全く取らないタイプの行動が出てしまう。遊ぶ機会は少なそうだがまたプレイしたいゲーム。
クランク
ドラゴンの根城から財宝を奪い、ドラゴンに襲われる前に脱出するゲーム。財宝を奪うほどドラゴンの警戒度が上がり、警戒度パラメータはプレイヤー全員で共通であるためチキンレースの要素がある。システムがドミニオン+ボードゲームという感じで、デッキ構築系が好きなら刺さりそう。運要素はかなり大きめ。
ブムントゥ
動物タイルを集めるゲーム。自分が載っている動物タイルによって移動方法が変わり、移動後にその動物タイルを取ることができる。特定の動物タイルを取ると動物の「序列」を変えることができ、ゲーム終了時に序列に従って各動物タイル1枚あたりの点数が決まる。比較的軽めのゲームだがデザインがグッド。
トゥキ
お題通りの立体を作るパズルゲーム。ウボンゴ3Dと同じ作者だが、難易度は通常ウボンゴ並みに低く非常に簡単。独特なプレイ感覚ではあるが、パズルゲームならもっと難しい方が好み。
サグラダ
ダイスを使ってステンドグラスを作るゲーム。ランダムリソースから順番にリソースを取得して個人ボードを埋めていくゲームシステムや、ステンドグラスを作るテーマはアズール シントラのステンドグラスと似ているが、サグラダは運要素が非常に大きい点で異なる。リプレイ性や写真映りの良さなら上位に入るゲーム。
ヒットマンガ
セリフの中身がないマンガの1コマを使ったカルタ。読み手がコマの場面に合ったセリフを自分で考えて読み上げ、他のプレイヤーは読み手が持っていると思われるコマが書かれたカードを取る。一見難しそうだがコマの内容を伝えるだけならむしろ簡単なことが多く、コマの内容を伝えるだけのセリフはつまらないことが多い。この点をゲームデザインで上手く解消してほしかった、惜しい作品。
メディチ
モダンアートと同じ作者による、5種類の商品を対象とした競りゲー。商品を競り落とすとその商品の独占度が上がり、独占度を大きく上げるとボーナス勝利点がもらえる。このシステムにより、ゲームが進むにつれプレイヤーごとに別々の商品を狙う展開になりやすい。プレイ回数は多いが、プレイするごとに運要素の大きさを実感して評価が下がってしまったゲーム。ダウンタイムも長め。
平遥
銀行の業務を模した経済ゲーム。貸付、借入、支店建設、支店送金、宣伝、約束手形発行などを行って手数料や利ざやを稼ぐ。何をするにも金がかかるので序盤の資金繰りは非常に苦しく、大変独特なプレイ感がある。自分の行動をダイスで決定するほか、取れる戦術が大きく分けて2種類しかなさそうなのが残念。拡張を入れるとかなりゲーム内容が変わるらしい。
スマートフォン株式会社
グローバルメーカーの社長となり、世界中でスマホを販売して勝利点を稼ぐゲーム。商品に安値をつけることで、より多くの商品を販売できるが、販売によって得られる商品1個あたりの勝利点は小さくなる。商品生産、開発競争、販路確保、市場の奪い合いなどの色々な要素を上手く取り揃えているが、露骨に強そうなアクションが少数あり、意外に展開に幅がない。また、説明書が不備だらけなので以下の記事を参照して遊ぶことを推奨。
四季の森 / Harvest Island
季節毎に分けられた山札から果物カードを取り、種まきから収穫まで行い勝利点を稼ぐゲーム。特定の作物を他人より多く生産するとマジョリティボーナスが得られる。デザインは良いが、天災の運要素やソロプレイ感がやや強い。
レイルロードインク
線路や道路が書かれた共通のダイスを振り、出た線路や道路を手元の用紙に記入して繋げていくパズルゲーム。行き止まりを作ってしまうと減点となる。使用できる線路や道路のパーツは全員同じなのに、仕上がりはなぜか全員バラバラになる不思議なゲーム。
曼荼羅
タイル上にチップを置き、自分のチップでなるべく長い一筆書きルートを作るゲーム。タイル上に沢山自分のチップを置けば一筆書きルートは長くなるが、チップを支払うことでタイルの配置を変えたり、追加チップを取得するボーナスを得られる。大変独特なプレイ感があるが、アクションを競り形式で決定するのでlose-loseの不毛な争いになることもしばしば。
カタンの開拓者たち
自分がボードゲームと出会うきっかけになった、非常に有名なボードゲーム。色々なボードゲームを遊ぶにつれ自分の中での評価がかなり落ちてしまった。初心者向けボードゲームとしてよく紹介される印象があるが、妨害要素と運要素が強いので少なくとも初心者向けではないと今は思っている。インタラクション性とリプレイ性の高さは特筆モノ。