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【逆転裁判6】第2話「逆転マジックショー」レビュー

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△逆裁6の新要素である映像比較だが、実は第2話にしか登場しない


逆転裁判6の第2話「逆転マジックショー」のレビュー。

※ネタバレ注意!

 

真犯人の行動

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10年前

或真敷一座のメンバー「メンヨー」として活動していた真犯人は、マジックの練習で失敗し、右肘に大怪我を負う。

或真敷一座のポスターの撮影を行う。

怪我が原因となり、一座の長である或真敷天斎にショーの出演停止を言い渡されるが、それを押し切って出演しようとしたため、一座から破門される。

この事件により、真犯人は或真敷一座への復讐を企てる。

数年前

メンヨーのファンであった伏樹直人と番組で知り合う*1

2年前

伏樹にメンヨーの名を襲名させて2代目メンヨーとし、彼のプロデュースを担当して人気マジシャンの仲間入りをさせる。

日時不明(1年前までのどこか)

テレビ局を通じてみぬきに伏樹との共演を持ちかける。

ドッキリ企画を伏樹、ミミ、キキと共有する。

4月27日

ショーの前に、伏樹が大ウィンチで巻き上げられる先にあるクッションにナイフ(真の凶器)を仕掛ける*2

業務委託契約書(損害賠償として3億円を支払う契約)と「みぬきの書いたメモ」(カメラ回収の指示書)の署名を捏造するため、スタッフに以下の事項を命令する。

  • トリックを仕掛けたボードを使ってみぬきに署名させる
  • ボードの裏蓋から契約書とメモ(とカーボン紙1枚)を回収する*3
  • メモとボードを楽屋に置く*4
  • 契約書を真犯人に渡す

午前10時20分開始のゲネプロ第二幕の最中は別の番組の収録に向かい、アリバイ作りを行う(このとき、ミミのミスによりぼうしクンの立ち位置が棺桶の左から右に変更され、それに合わせてみぬきも立ち位置を棺桶の左から右に変更した)。

収録終了後、タクシーで会場に向かい、現場に工作する。工作の内容は以下の通り。

  • クッションにつけたナイフ(真の凶器)を回収する
  • 伏樹の死体を地上に下ろす*5
  • 舞台裏にある鋼鉄の剣に血液をつけ(あるいは被害者をもう一度刺し)、ステージに置く
  • ステージ上のゴム製の剣を奈落に置く
  • 棺桶の左側の壁に被害者の血液をつける。しかし、本番のショーの映像を見てぼうしクンとみぬきの立ち位置が変わっていたことを知ったため、棺桶の壁を入れ替えた

初見プレイ時ミス箇所

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  1. みぬきが投げたトランプを映像指摘する場面でカーソル操作をし忘れる
  2. 影に似た物を映像指摘する場面で、ぼうしクンをつきつける

物語の概要

舞台を日本に移し、成歩堂の弟子である王泥喜を操作して日本の裁判に臨む第2話。

王泥喜、みぬき、茜、ナユタ、心音といった主要な登場人物を導入する役割を担っている。

シリーズで初めてみぬきが被告人となり、事件全体に或真敷一座が深く絡む展開となっている。逆転裁判4プレイヤーには特に嬉しい演出やフォロー、小ネタも多数。

真犯人は或真敷一座との因縁があり、巧妙なトリックを用い、様々な手段で主人公一派を追い詰めてくる強敵である。

 

良いと思った点

  • 逆転裁判4で問題視された点が丁寧にフォローされている。第2話は或真敷一座を軸として物語が進むが、或真敷一座は逆転裁判4の破綻の最大の原因となっている大問題グループであり、ヒロインポジションのみぬきでさえも逆裁4では問題人物の一人であった。しかし、第2話ではみぬきに対する自然なフォローをしてヒロインとして確立しており*6、同じくマジックショーを題材としながら終始破綻に満ちた内容であった逆転裁判4の第3話の反省も活かされており*7、さらに逆裁4プレイヤーにしか分からない皮肉も含まれている*8など、逆裁4プレイヤーにとって非常に嬉しい作りになっている。この第2話があるお陰で逆裁4をプレイする価値が生まれたと言っても過言ではないだろう。
  • 王泥喜、みぬき、茜、ナユタ、心音といった主要な登場人物の描写や導入が丁寧*9
  • 真犯人が印象的である。王泥喜やみぬきと間接的な繋がりがありながら、残酷かつ狡猾で、技術も地位も人間も利用できるものを全て利用して復讐を企ててくる。見た目の大きな変化が無いにも関わらず、豹変前と後で印象がガラリと変わるデザインも素晴らしい。個人的に歴代逆転裁判シリーズの中でも好きな人物上位に入る。
  • ミミとキキを混同させるミスリーディングがお見事。ヤマシノPに「バニーちゃん」と呼ばせる所も上手い。
  • 逆裁6の新要素である映像比較が面白く、導入も自然。インターフェースも充実している。第2話にしかないのが残念。
  • 真犯人のブレイクモーションが独特で面白い。マジックの失敗を嘲るような二代目メンヨーのお面と、マスコミのカメラのフラッシュを彷彿とさせるスポットライトの連射に皮肉が利いている。

 

問題点

  • ステージ調査時の処理が重い。
  • 映像比較のカーソル指摘を忘れやすい。
  • 指紋検出が非常に面倒。一度に調べられる範囲が狭すぎる上に使用できる粉の量の制約まである。その上処理が重い。
  • 棺桶の血痕が描かれていない。そのせいで決め手になる証拠の1つなのに印象が薄い

 

  • 真犯人の動機の描写が不十分(と取られかねない)。真犯人が伏樹を殺害した理由は、みぬきに殺人の濡れ衣を着せることで或真敷一座への復讐を果たすことであるが、伏樹は元々メンヨー(つまり真犯人)のファンで、真犯人が直々にメンヨーの名を襲名させプロデュースまで行ったような現役マジシャンである。つまり真犯人には復讐する動機はあっても伏樹を殺害する積極的な理由は無く、むしろ真犯人にとって伏樹は全く無関係な人間よりも遥かに殺害を躊躇いそうな人物なのだ。結局、真犯人が躊躇なく伏樹を殺害した理由は想像することしかできない*10

 

  • ボードのトリックが破綻している。
    • みぬきの筆圧が強すぎる。このインチキボードはボードの底面にカーボン紙と書類を挿入することで、ボードの上の書類に書いた文字がボード底面に仕込んだ書類に転写されるという仕組みになっているが、みぬきがボードをペン先に沿って凹ませるような凄まじい筆圧で署名しない限り、このような固いボード越しに署名がまともに転写されるとは考え辛い*11
    • ボードとカーボン紙が楽屋に置きっぱなしにされている。ボードもカーボン紙も明らかに真犯人にとって不利な証拠であり*12、元々テレビ局の備品であるボードをなぜ楽屋に残したのか不明である*13。ただし、ボードとカーボン紙を置きっぱなしにしたのはスタッフのミスである可能性がある*14
    • 「みぬきの書いたメモ」がみぬきの署名だけ直筆(実際は転写だったが)で、メモの内容は活字という非常に不自然な物になっている。そもそも契約書ではないただのメモに直筆で署名する必要はない
    • 業務委託契約書の内容により、番組を放送不能にしたみぬきに3億円が請求されるが、未成年であるみぬきの単独署名でこの契約が有効になるはずがない*15
    • このように破綻が多いトリックでありながら、物語の大筋どころか殺人トリックにも直接関係しない。単にピンチを演出するための要素であり、最悪カットしても大きな影響はない。
  • 或真敷一座の広報用ポスターにメンヨーの大怪我が写っている。正確に言えば、メンヨーが右肘の大怪我を目立たせるようなポーズをわざわざ取っている*16
  • みぬきの説明が不十分であることが多い。セリを動かしたことやトランプを飛ばしたことなど、彼女の方から説明しないのは不自然である。
  • カメラの動きが不自然である。棺桶に刺した後の剣を映していない点はトリック上仕方ないとしても、棺桶から倒れた伏樹すら映していないのは不可解である。このアングルではみぬきが何に驚いたのか全く分からないのでドッキリ映像として失敗である。

 

 その他疑問点など [クリックで表示・非表示切替]

  • 映像に音声がなく、誰もそれを指摘しない。ゲネプロならばマイクもしっかり準備するはずだ。勿論、もし音声があれば編集したことに気付かれてしまうのだが。
  • 伏樹の「今回のショーで或真敷の隠した秘密が明らかになる」という発言と、或真敷の手帳を盗んだこと(さらに、手帳の内容をバラそうとしたこと)が、真犯人の命令だったのかどうか明かされない。殺害動機に関わる重要なことなのでおそらく真犯人の命令であると思われるが…。
  • ぼうしクンのマントには切り裂かれた痕跡があり、これは真犯人が取り付けたナイフによるものとされたが、ぼうしクンは小ウィンチに、伏樹は大ウィンチに繋がっていたので回収コースが異なる。よってぼうしクンのマントが切り裂かれるのはおかしい。
  • ステージ下の奈落は蛍光テープを目印にしなければならないほどの暗闇であったのだが、奈落に居たみぬきはなぜミミがぼうしクンの立ち位置を間違えたのが分かったのだろうか?
  • キキと真犯人の会話は明らかに盗み聴きされるとマズい内容だったが、扉の鍵が開いていて明かりがついている(つまり、誰かいる可能性が十分にある)奈落にわざわざ話しながら入ってくるのはやや迂闊すぎる。
  • 予定通りならばみぬきとぼうしクンは棺桶の左側に登場するはずだったが、そうなると棺桶がステージ中央にあるにも関わらず、ミミとみぬきとぼうしクンが棺桶の左側に位置するという非常にバランスの悪い構成となってしまう。もしかしてミミは棺桶の右側に立つ予定だったのか?
  • 棺桶の穴には伏樹の血痕が付着していたが、事件現場がステージ上か奈落か議論になった際に、なぜナユタはこの事実を持ち出さなかったのだろうか?棺桶はずっとステージ上にあったのでこの事実を言うだけで事件現場はステージ上だと主張することが出来るのに。
  • (この指摘は無粋だが)容疑者であるみぬきに刃のある鋼鉄の剣を持たせるのはマズい。
  • 真の凶器は真犯人が用意したナイフであったため、傷跡が一致しないのではないか?ただし真犯人が事後工作時に伏樹を鋼鉄の剣でもう一度刺した可能性はある。
  • ドッキリによってみぬきが逃げ出さなかった場合、トリックが破綻していた可能性が高い。

総括

ボードのトリックなど破綻している内容はあるが、主要登場人物の導入編として申し分なく、第2話には勿体無いと感じるほどの真犯人が登場し、逆裁4の問題点に対する手厚いフォロー(特にみぬきの描写)もあるなど、歴代逆転裁判シリーズの各話の中でもトップクラスの評価を与えたい内容に仕上がっている。

第2話があるお陰で、逆裁4をプレイして良かったと初めて思うことが出来たのは個人的に特筆に値する。


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△ブレイク後の真犯人の発言だが、彼を象徴する言葉となっている


*1:この時点で、真犯人が一座への復讐に伏樹を利用しようと考えていたかは不明である

*2:血痕等の痕跡を残さないため、このナイフは伏樹の体を貫通しない程度の長さであったと考えられる

*3:当然スタッフはボードのトリックを知っていたことになり、有印私文書偽造の幇助犯もしくは共同正犯となる。また、今回は業務委託契約書だけでなく「みぬきの書いたメモ」にも転写をしているため、使用しているカーボン紙は2枚である

*4:ショーの前にミミとキキがメモを見つけるようにした。ただし「問題点」の項目で述べる通り、ボードを置いたことに関してはスタッフのミスである可能性がある

*5:王泥喜が指摘したように自然に落ちた可能性もある。まあ本当に落下したのなら何か痕跡がつきそうなものだが

*6:みぬきは「真のエンターティナーは、どんな時も笑顔でいなければならない」という或真敷の教えを忠実に守り、どんな時も笑顔でマジックをする芯の強い人物として描かれている。また王泥喜を強く信頼し、彼に弁護を任せたり、マジックのトリックを彼に教えるという本来禁忌である行為を犯したりしている。他にも先輩マジシャンを尊敬する発言やショーに備えて懸命に練習する様子、しかし弱い一面もあり王泥喜の前で泣き出してしまう側面もあるなど、深みのある描写が為されている。また、他の或真敷の人物に対するフォローもあり、或真敷ザックは逆転裁判4の破綻の根幹である大問題人物であるが、笑顔が絶えない一面は確かに逆裁4の頃から有り、或真敷一座の教えは守っていたという自然な長所を付与したと言える。或真敷天斎に関しては真犯人の本性を見抜いていたというフォローがされている

*7:逆裁4第3話では、事件解決のために必要なのにも関わらず、王泥喜が頼んでもみぬきはマジックのタネは教えてくれなかったが、今作の第2話ではみぬきが事件解決のためにマジックのタネを教えてくれる(逆裁4では他人のトリックで、今作では自分のトリックという違いはあるが)。また逆裁4第3話には、私人間の契約により被告人に有利になり得る証言を弁護側の証人が拒否するという不自然な演出が存在したが、今作の第2話では、被告人に対し実は悪意のある人物が、契約履行による金銭受領のために被告人に有利になり得る証言を渋る演出が存在し、逆裁4の反省を活かしていると言える

*8:真犯人は「一座の人間にロクな奴は居ない」と言うが、逆裁4をプレイ済なら分かる通り、これは残念ながら当たっている。また、ブレイク後の真犯人が自分は或真敷に勝ったという旨の負け惜しみを言うが、王泥喜は或真敷優海の息子であるため、結局真犯人は或真敷に負けたということになる

*9:舞台が日本に変わったことで王泥喜をプレイヤーキャラとすることは自然な流れであり、成歩堂不在の中、強敵である真犯人を打ち倒すことで彼の評価が向上する流れに繋がっている。みぬきは前述の通り様々な内面が描かれており、王泥喜との信頼関係の強さも描写されている。茜は今作から科学捜査官になり、重要な証拠の発見に協力してくれるほか、みぬきの弁護にも積極的に助力してくれる。また、不正を行った検事の一掃により日本で検事が不足し、革命派を追って日本に入国していたナユタ検事が起用されるという流れも、逆裁5のストーリーとも繋がりのある比較的自然な導入と言える。ココネは逆裁5と同様に探偵パートでは助手、法廷では心理分析ができる弁護士として協力してくれる

*10:真犯人は伏樹のことを「タダのシロウト」と呼び、人気マジシャンの仲間入りをしたのも自身のプロデュースの力によるものという旨の発言をしている。また、真犯人はタネやシカケをバラす恐れがあるからという理由で助手を取らない主義を貫いている。つまり真犯人は伏樹のことを評価も信用も全くしていないことは確かで、(トリックの伝承も行っていた場合、マジックのタネに対する口封じも兼ねて)最初から或真敷一座への復讐のため殺害するつもりで弟子とした可能性がある。ついでに言えば伏樹はプライベートでもマジシャンとしてのキャラを崩さないという或真敷らしい一面があり、この性格を真犯人が気に入らなかった可能性もある

*11:前述の通り使用しているカーボン紙は2枚であるため、ボード底面には計4枚の紙が仕込まれていたことになる。ボード無しに普通に重ねてやっと転写できるレベルだろう

*12:実際、ボード発見後に真犯人にボードをつきつけようとするとココネから「今それを見せても、差し押さえられるだけですよ」と諭される

*13:しかもカーボン紙に至っては、すぐ隣に仕込んでいた契約書とメモともう1枚のカーボン紙は回収しているにも関わらず、そのまま底面に仕込んでおり、極めて不自然である

*14:本当はボードの回収も命じられていたのに、うっかりメモと一緒に楽屋にボードを置いてしまった可能性がある。後でボードを回収するつもりだったのならカーボン紙が中に残っていてもギリギリ許容できるだろう。また、真犯人はこのスタッフを「ドジなルーキークン」と呼んでいたが、もしかしたらこの失敗を受けた発言だったのかもしれない

*15:民法第5条第1項(未成年者の法律行為)の解説を参照。金銭を支払う契約は「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」ではないため法定代理人(成歩堂龍ノ介が該当)の同意を得なければならない。また3億円という金額は明らかに法定代理人が処分を許した財産の範囲を超える(多分お小遣い一生分前借りでも足りない)ため第3項の規定にもあたらない

*16:メンヨーが怪我を写したのも不自然であるが、普通この手のポスターの撮影にはグリーンバックなどを用いて個別に撮影した後に合成するはずである。カメラマンや編集者が指摘したり、修正したりしなかったのだろうか?